コーヒーのTDSと抽出収率はどう違う?
TDSと抽出収率は、どちらも「たくさん出た」ことを表す数字に見えます。この2つは何が違うのでしょうか。
回答
TDSは抽出液の中に溶けている固形分の質量割合、抽出収率は使ったコーヒー粉に対して取り出した固形分の質量割合です。同じ量の成分を取り出しても、水で薄めればTDSは下がるため、「濃い」と「多く抽出した」は同じ意味ではありません。数字を比べるときは、何を分母にしているかをそろえます。
なぜそう言えるか
TDSは飲み物の重さを分母にした割合、収率は抽出前の粉の重さを分母にした割合です。Ristenpart・Kuhl (2017)が扱う物質収支(入ったものと出たものの量を数える考え方)を使えば、カップに移った固形分の量を求められます [Ristenpart2017]。
式は「収率(%)=TDS(%)×回収した抽出液の質量÷粉の質量」です。粉20g、抽出液300g、TDS1.20%なら、固形分は3.6g、収率は18.0%になります(数値は説明用の計算例) [Ristenpart2017]。
ここに成分を含まない水60gを足しても、固形分は3.6gのままです。TDSは1.00%に下がりますが、収率は18.0%で変わりません。薄まったことと、取り出した量が減ったことは別です(蒸発やこぼれを無視した計算例) [Ristenpart2017]。
ただし、この式に入れるのは注いだ湯量ではなく、カップに回収した液量です。粉に残った液の中の成分まで含めて「粉から溶け出した総量」を知りたいとき、とくに浸漬式では、残った液も数える別の物質収支が必要になります [Ristenpart2017]。
Frost ら (2020)は、ドリップのTDS・収率・焙煎度を変えて官能特性を調べています。この2つの数値は味を比べる座標として役に立ちますが、測定した条件を越えて、同じ数値なら同じ味、数値が高ければ好まれる、とまでは言えません [Frost2020]。
この話が効いてくる場面
レシピを変えて「薄くなった」と感じたとき、成分を取り出す量が減ったのか、液量が増えて薄まったのかを整理する場面に効きます。実務では粉量、回収液量、TDSをセットで記録し、測定時の試料の扱いもそろえて比較してください。味の記録には苦味や酸味の強さと自分の好みを分けて残すと、収率を上げること自体が目的になるのを避けられます。
もっと詳しく
有料記事では、濃度と収率の2軸で味を読む方法と、チャート上の数値だけでは好みを決められない理由を解説しています。
作成:2026年9月20日 改訂:2026年9月22日