微粉の移動 — 分けると、証拠の重みが逆になる
「微粉が動いて目詰まりを起こす」。この話は十年以上、賛成と反対に割れたまま続いてきました。ところが賛成派と反対派は、よく見ると別々の現象について話しています。一方は乾いた粉の中で起きる移動、もう一方は抽出中に水流が運ぶ移動。この二つを分けると、証拠の重みは正反対になり、論争の大半は消えます。残るのは、もっと小さくて具体的な問いです。
専門用語は出てくるたびに説明します。予備知識は要りません。
結論から
- 「微粉の移動」という一語が、二つの別現象を指してきた。乾いた粉の中で振動によって起きる移動と、抽出中に水流が運ぶ移動。この二つを分けないまま賛否が戦っていたことが、論争が長引いた主因である。
- 水流が運ぶ側の証拠は強い。流れの向きを逆にすると「速く始まってすぐ落ちる」流量のパターンが再現する、という実験がある。パックが潰れたのだとすると、この再現は説明できない。
- 乾いた粉の側は、根拠が薄い。よく引かれる物理の実験は直径 2 mm のガラス球のもので、コーヒーへの言及が本文に一行もない。著者らは対象を「凝集力を持たない粗い粒子」と明記している。
- 「微粉の移動は反証された」という言い方は、反証の範囲を広げすぎている。実際に否定されたのは「微粉だけの層が水を通さない栓になる」「微粉がカップへ流れ出る」の二つで、水流による移動そのものではない。
- ∴ 手を入れる場所が変わる。タッピングやディストリビューションより、粉の下のペーパーとプリインフュージョンのほうが理にかなう。ただしどちらも移動を「なくす」のではなく「減らす」に留まる。