透過式の不均一な流れ — 自己増幅するしくみと、測られていない一段目
同じ粉を同じ量、同じ湯で淹れても、味が揃わないことがあります。原因としてよく挙がるのが「チャネリング」、つまり湯が粉の層の一部だけを通り抜けてしまう現象です。たいていの説明はここで止まります。この記事はその先を見ます。不均一な流れ(不均一抽出)は偶然のムラではなく、自分で自分を大きくするしくみを持っている。ただし、そのしくみの一段目は、まだ誰も測っていません。
専門用語は出てくるたびに説明します。予備知識は要りません。
結論から
- 不均一な流れは偶発事故ではなく、自己増幅する。ある流路で抽出が進む → その流路の空隙が増える → 水を通しやすくなる → 流量が増える → さらに抽出が進む。詰め方のわずかな差が、この輪で広がっていく。
- ただし、この輪の一段目は、まだ測られていない。「抽出で空隙が増える」を、流路ごとに時間で分けて測ったデータは、分野をまたいで探しても見当たらない。支えているのは計算だけである。
- しかも逆向きの計算が同じだけある。粉が水を吸って膨らめば流量は下がり、微粉がフィルターの手前に捕まっても下がる。上げる側と下げる側は、同じ粉の層の中に並んでいる。実測がある側は、じつは「下がる」ほうである。
- 細かく挽けば収率が上がる、とは限らない。ある細かさを越えると、モデルが予測する収率と実測の収率の差が最大 13.1 ポイントに開く。ドーズを減らして粗く挽くほうが、同じ収率へ安定して届く。
- 粉の層の透水率が「1桁半に散らばっている」ように見えるのは、三つの違うものを一つの列に並べたからである。加えた圧の違い、一つの論文の中の充填と粒度の幅、そして床の状態の違い(乾いた層/飽和した層/浸潤の途中の層)。