反応はいつ始まるのか — 「140℃から」の正体
焙煎の解説書には、よく温度の表が載っています。「100℃で乾燥、140℃でメイラード、170℃でカラメル化、190℃で1ハゼ」。覚えやすくて便利です。ただし、化学の側にはそういう境目がありません。この記事では、なぜ無いのか、では何が書いてあったのか、そして境目が無いと分かると何が変わるのかを順に見ていきます。
専門用語は出てくるたびに説明します。予備知識は要りません。
結論から
- 焙煎の主要な反応に「開始温度」はない。温度を上げれば速くなる、というだけの連続的な変化で、どこかで急にスイッチが入るわけではない。
- 実際、メイラード反応は冷蔵庫の中でも進む。4℃で12か月、冷凍で −20℃ でも進行が確認されている。
- 「140℃から」が指しているのは、褐色が目で見えるようになる温度。化学が始まる温度ではない。
- 上限もない。「110〜120℃で頭打ち」という報告があるが、あれは温度の天井ではなく、水が飛んで反応が止まりかけている姿である。
- 制御しているのは「何度を超えたか」ではなく「どの温度に、どれだけの時間いたか」。温度と時間の積み上げが効いている。