抽出温度と味 — 後から落ちるコーヒーは、全部の味が弱くなる?

ドリップの途中で受け容器を交換すると、最初と最後で違う液が集まります。Batali ら (2020)では、最初の滴から30秒ごとに液を取り分けました。この「取り分けた1杯」を分画と呼びます。後半の液は概して薄くなりました。では、苦味と甘味は?

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ドリップの途中で受け容器を交換すると、最初と最後で違う液が集まります。Batali ら (2020:分画ぶんかく(fraction)の研究)では、最初の滴から30秒ごとに液を取り分けました。この「取り分けた1杯」を分画と呼びます。後半の液は概して薄くなりました。では、苦味と甘味は? (Bataliら、2020)

実測の平均値を再描画 / Table 2

苦味と甘味は、同じ方向には動かなかった

分画1から8の苦味と甘味の平均強度苦味は56.56から21.06へ、甘味は9.92から29.97へ。甘味は分画7の34.11が最大。各分画の数値は直後の表で確認できる。平均の強度(0–100の尺度、表示範囲0–60)0204060早い分画 → 遅い分画(30秒ごと)苦味甘味12345678
Batali ら (2020)Table 2 の苦味・甘味の平均値(分画1〜8)から描いた図。線は順序の案内。
数値と原論文の文字記号を確かめる
強度の平均値。括弧内は原論文Table 2のLSD比較の群記号ぐんきごう(grouping letters)
分画苦味甘味
156.56 (a)9.92 (e)
247.89 (b)13.64 (de)
341.03 (c)17.53 (cd)
431.53 (de)19.31 (c)
526.19 (ef)24.86 (b)
620.81 (fg)27.39 (b)
719.75 (g)34.11 (a)
821.06 (fg)29.97 (ab)

括弧の文字は、統計的な検定で差があると判定されたか(有意差ゆういさ(statistically significant difference):決めた統計基準で差があると判定されたこと)を表す記号です。文字は同じ味の列の中だけで比較します。共通する文字がある組は、この比較方法では有意差が示されていません。例えば甘味の7と8はaを共有します。「7の方が数値が高い」ことと「7の方が明確に甘いと示された」ことは別です。

この実験では、後半ほど苦味が概して弱く、甘味が強くなる傾向でした。ただし甘味は毎回増えるわけではなく、分画7から8では平均が下がっています。(Bataliら、2020:Table 2)

これは「甘い物質の量」ではなく、訓練した評価者が感じた甘味の強さです。さらに、同じ液を水で薄めた比較でもありません。抽出の時間帯と一緒に、成分組成も変わり得ます。

この図から言えないこと

「水を足せば必ず甘くなる」「甘味が強い方がおいしい」「甘味の点数は砂糖の量」は、いずれもこの図だけでは言えません。

はじめの一歩に戻る → 濃度と収率の違い平均値と標準偏差誤差棒の読み方

実験結果:後半の液では苦味が弱まり、甘味は強くなる傾向

Batali ら (2020:分画の研究)は、抽出液を30秒ごとに取り分け、訓練した評価者に味の強さを尋ねました。分画1と8の苦味の平均は56.56と21.06、甘味は9.92と29.97でした。甘味の平均は分画7の34.11から8の29.97へわずかに下がります。

このページの用語

用語の読み方と英語
用語読み英語
分画ぶんかくfraction
群記号ぐんきごうgrouping letters
有意差ゆういさstatistically significant difference

ふりかえり

最初の滴から30秒ごとに液を取り分けた1杯を、何と言いますか?

解説を読む

分画(fraction)です。Batali ら (2020:分画の研究)は、この分画ごとに訓練した評価者が味の強さを評価し、後半の分画ほど苦味が弱く、甘味が強い傾向を報告しました。

出典:Batali ら (2020:分画の研究、抽出温度の研究)/Batali ら (2022)。

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