コーヒー焙煎のいまの理解 — 確かなこと、争点、埋まらない空白

焙煎の知識は、温度の表と色見本と「◯◯理論」という形で流通しています。ところが査読論文の側から読み直すと、そのいくつかは支えを失い、いくつかは残り、いくつかは「まだ誰も測っていない」ことが分かります。この記事は、そのどれがどれなのかを一望するための地図です。結論と、その確からしさの度合いだけを置きます。個々の論拠は、それぞれの記事にあります。

シェア
焙煎の科学 / 総論
最終更新: 2026-09-14 / 信頼度: 節ごとに記載
専門用語は出てくるたびに説明します。予備知識は要りません。
本文中の記事名はリンクです。一部は有料プランの記事で、未加入の方には冒頭の「結論から」までが表示されます。

結論から

  • 焙煎に「開始温度」はない。あるのは反応ごとの温度への敏感さの違いだけで、制御しているのは「何度を超えたか」ではなく「どの温度に、どれだけの時間いたか」の積み上げである。
  • 焙煎を動かす主要な反応のうち、温度で動くのはメイラード反応だけ。ほかは時間で積もる。ただしその根拠になる数値は、並べて比べられない。同じ名前が別の量を指しているからである。
  • 焙煎色は、味どころか焙煎の進行度すら一意に決めていない。同じ色の中に、乾物の分解量にして18%の幅がある。
  • 実務が名前をつけた変数は、ほとんどが複数の量の束である。焙煎度・発熱量・かさ密度・豆温。12例ある。交絡とは違う。その変数自体が単一でない。
  • 土台が1つ空いている。焙煎の温度域で豆の比熱を測った文献が一件もない。焙煎の数理モデルは全部その上に建っている。

1. この地図の読み方

記述は3つの層に分けます。層の名前は結論の強さではなく、支えている証拠の形で決めています。「確立」は著者も試料も別の実測が複数あり同じ向きを指すもの、「争点」は反対報告があるか未検定のもの、「取り下げ」は原典に当たって支えが無くなったものです。

証拠の形で分けた3つの層 確立 — 独立した実測が複数あり、同じ向きを指す ・開始温度は存在しない。効いているのは温度と時間の積み上げ ・温度で動くのはメイラードだけ。収斂味と苦味は時間で積もる ・焙煎色は焙煎の進行度を一意に決めていない ・名前のついた変数は、たいてい複数の量の束である 争点・仮説 — 反対報告があるか、まだ検定されていない ・1ハゼで制御感が変わる理由は、発熱ではなく蒸発の終わり ・積み上げ量は一つの数ではなく、豆一粒ごとの分布である ・深い焙煎の刺激的な後味の担い手が、まだ特定できていない ・実践家は正しい操作を先に見つけ、説明を後から当てている 取り下げ — 原典に当たった結果、支えが無くなった ・メイラード反応は 140℃ から始まる ・同じ焙煎色なら、焙煎の進行度も抽出のされ方も同じである ・比熱は焙煎が進むと下がる

図1 この知識ベースの確信度の地図。各層に挙げたのは代表例で、網羅ではありません。縦の並び順に意味はありません。

2. 確立①——温度は「関門」ではなく「つまみ」である

信頼度: (向きについて)/ (活性化エネルギーの数値を比べられるかについて)

用語

メイラード反応 アミノ酸と糖が結びついて、褐色の物質と香りを作る反応です。パンの焼き色も肉の焼き目も同じ反応です。

クロロゲン酸(CGA) 生豆に多い酸の一群。その分解物が、苦味と収斂味(口の中が乾いて引き締まる感じ)の主な担い手です。

「メイラードは 140℃ から」「クロロゲン酸は 110℃ から」は目安としては便利ですが、化学の側にその境目はありません。どちらも温度を上げれば速くなるというだけの連続的な変化です(反応はいつ始まるのか)。端的に示すのは、焙煎中の発熱を測った古典的な仕事です。一定の速さで加熱しながら熱の出入りを記録すると、毎分 1℃ では発熱が 150℃ で始まり、200℃ でピーク、240℃ で終わる。ところが毎分 0.5℃ にすると、同じ発熱がもっと低い温度へ移動します。「発熱は◯◯℃から始まる」は、昇温速度を指定しなければ意味を持ちません。温度は反応の関門ではなく、速さのつまみです(熱の入り方は 豆に熱はどう入るか にあります)。

では、そのつまみはどの反応にどれだけ効くのでしょうか。ここに決定的な非対称があります。

用語

活性化エネルギー(Ea) 「反応が始まるのに必要なエネルギー」ではありませんその反応が温度にどれくらい敏感かを表す数です。大きいほど温度を上げた見返りが大きく、小さいほど時間をかけるしかない。

この値が反応ごとにまったく違うことが、焙煎の設計を決めています。主要な反応のうち、温度で動くのはメイラード反応だけ。クロロゲン酸の分解も発熱も見返りが小さく、時間で積むしかありません。

← 時間で積む側 温度で買う側 → 焙煎豆で報告された値 メイラード反応(全体) 109〜145 ストレッカー・ジカルボニル系 108〜179 ピラジン・含窒素複素環系 40〜121 焙煎の発熱反応 約46 CGA分解(実豆・単一ピーク) 26.0 CGA分解(実豆・総量) 44.4 単離した5-CQAの熱分解 79 同一の設計・同一の試料で測った4つの量(カカオ) 水分の減少 59.6 明度の変化 76.6 色相角の変化 93.7 メラノイジンの生成 132 050100 150200 活性化エネルギー Ea(kJ/mol)→

図2 温度への敏感さの散らばり。横方向の位置は報告値ですが、縦の並び順に意味はありません。灰色の3点は「クロロゲン酸分解の活性化エネルギー」という同じ名前の別々の量。下段の4点は一つの仕事から出た値で、試料はカカオです。
データ出典: Schwartzberg (2002)/Mehaya と Mohammad (2020)/Perrone ら (2010)/Sacchetti ら (2015)

ここで、この地図でいちばん大事な注意が出ます。灰色の3点(26.0、44.4、79)は、どれも「クロロゲン酸分解の活性化エネルギー」として文献に書かれていますが、追っている対象も温度域も装置も違います(単一のピーク/実豆の総量/単離した1分子)。一つの名前が、3倍の幅の別々の量を指している。∴ これを「26〜79 kJ/mol の幅」と書いてはいけません。幅ではないからです。同じ散らばりはメイラード反応の内部にもあります。ストレッカー・ジカルボニル系(108〜179)とピラジン系(40〜121)では敏感さが違う。∴ 対立は反応名ではなく、経路のレベルで語らなければなりません。そして系を揃えてもなお散ります。図2の下段は、カカオ豆を 125・135・145℃ で最終水分が揃うまで焼き分けた一つの仕事で、同じ試料・同じ装置から出た4つの値が 2.2 倍に散っています。

ただし「低い値=時間で積もる」が使えるのは単調に積み上がる量だけで、山なりに動く成分もあります。早く出て、早く壊れる。より詳しい値の読み方は 温度で買うか、時間で積むか にあります。

3. 確立②——甘さは温度で買い、収斂味と苦味は時間で払う

信頼度: 中〜高(原理の向きは複数の実測で支持。担い手の同定は空白)

これを実務の語に翻訳すると、甘さと質感は温度で買える。収斂味と苦味は時間で積もる。ただし両側とも単純ではありません。「甘さ」は3つのものの合成です。①舌で感じる甘味の刺激。ただし物質は未同定で、糖ではありません。抽出液中の糖は検知できる濃度の 1/20 しかない。②甘さを呼ぶ香り。焙煎で買えるのはここだけ。③ほかの味からの抑制。しかも②も半分しか買えず、天井を決めているのは生豆の側です(甘さはどこから来るのか生豆が決めていること)。

「苦味」も一つの量ではありません。穏やかなほうの苦味を担うキニド(クロロゲン酸が焙煎初期に変化した物質)は逆U字を描き、ごく浅い焙煎でも、ごく深い焙煎でも頂点の 0.23〜0.28 倍しかありません。∴ 深煎りで苦味が強いのは、増えたからではなく別のものに置き換わったからです(苦味と収斂味の化学)。

言葉について — 「刺激的な後味」を何と呼ぶか

深い焙煎の刺激的な後味を指す業界の口語(=ハーシュ)がありますが、この記事では使いません。訓練された官能パネルが使う語彙集3つのいずれにも、その語が載っていないからです。定義があるのは業界の用語集の側だけで、採点できる記述子ではありません。代わりに使う収斂味苦味には定義も参照試料も実測データもあり、呼び名を移したことでこの原理は反証可能になりました。

カップの中でも甘味と苦味の打ち消し合いは対称ではありません。知覚の強さを揃えて比べると、ショ糖の側は苦味を 67.0〜71.7% 下げるのに、甘味の側はどの対でも有意になりませんでした。∴ 非対称性は「どちらがより下げるか」ではなく「片側だけが有意になる」という形で立ちます。留保: この比較は独立した実験ではなく、単味の測定から近い濃度の対を後から選んだものです。

4. 確立③——焙煎色は、その先のどれも決めていない

信頼度: (進行度について)/ 中〜高(抽出への経路について)

焙煎色は実務でいちばん信用されている指標で、その信用は「色が同じなら中身も同じはず」という前提に乗っています。この前提は成立しません。第一に、測定が粗い。粉の細かさを変えるだけで測定値は 63.2 から 85.2 まで動きます。そして発達不足の豆と正常な豆の色の差(74.4 対 74.9)は、同じ粉を測り直したときのばらつき(標準偏差 0.88)より小さい。∴ 発達不足は色では見つかりません(焙煎欠陥をどう測るか)。

第二に、これが本質ですが、色と進行度は別の反応系に属しています。統計的に等価なほど揃った同じ明度の豆どうしで、有機重量損失(失った重さのうち水以外の分)が 18% 違い、香気16成分のうち15成分に有意差が出る。逆に、明度がほとんど変わらない 30〜40 秒で主要な香気が半分になる区間もあります(焙煎色とメラノイジンRoR と DTR)。

さらに、ロットが均一でなければ色はそもそも成立しません。黒豆やサワー豆は同じ条件で焼いても焙煎が進まないからです(欠点豆のゼロトレランスに根拠はあるか)。

では色の先に何があるのか。焙煎は味を直接作っているのではなく、あいだに豆の物理構造が挟まります。

焙煎 温度 × 時間 豆の物理構造 多孔度・密度 抽出されやすさ 濃度・収率 カップ 苦味・収斂味 同じ色の中に 多孔度で8.2ポイント ここだけ単調でない 収率は山型になる ここは単調 濃くすれば苦くなる 同じ量でも、同一の抽出条件で見るか同一の抽出収率で見るかで 結論の符号が反転することがある

図3 焙煎から味までの経路。箱の大きさと矢印の長さに意味はありません。
データ出典: Al-Shemmeri ら (2024・2025)

ケニア産アラビカをすべて同じ焙煎色(測定値 70±1)に揃えて焼き、X線で空隙を測ると、220℃ 仕上げが 57.14%、280℃ 側が 65.35%。∴ 同じ色の中に、多孔度にして 8.2 ポイントの幅があります。

非線形性は「構造 → 抽出」に集中します。多孔度は単調に増えるのに、抽出収率は重量損失 12〜14% を境に山型になる。一方「抽出 → カップ」は単調です(濃度と収率)。そして符号の反転があります。カフェイン濃度は、同一の抽出条件で見ると深煎りほど低く、同一の抽出収率で見ると高い。∴ 同一焙煎色の比較実験で出た官能差の一部は、組成の差ではなく抽出収率の差でありうるのです。

5. 確立④——名前のついた変数は、複数の量の束である

信頼度: (仮説ではなく、12例の具体的な帰結)

この地図の中でいちばん応用がきくのがこれです。交絡とは違います。交絡は「別の変数が一緒に動いている」、こちらは「その変数自体が単一でない」。

一つの名前実際に指している別々の量
焙煎度色 / 重量減 / 時間。一つ揃えれば、必ず他の二つが散らばる
発熱量250〜420 / 232 / 107 の3つの別の量が同じ語で流通している
かさ密度粒の密度(872〜1290)と、詰めたときの詰まり具合(353〜379)。単位は同じ
メラノイジン濾過した画分の重さ / 吸光 / 分離した面積 / 比色。4つの別の測りかた
豆温向きの逆な二つの誤差の合成。遅れは低く、豆床が緩むと高く出させる
カッピングのSweetness旧フォームの二値判定 / 記述評価の 0〜15 強度 / 嗜好評価の9段階 / 主要な味のチェック欄。同じラベルが4つの別の量を指す
「増える」という述語分母を書かないと向きが決まらない。同じ物質で、乾物あたり平ら・抽出液あたりU字・濃度で逆U字

最後の Sweetness 欄は、束の中でもとりわけ厄介です。旧カッピングフォームでは杯ごとに「あるかないか」を判定する二値の欄でした。2024年の規格ではこれが分かれ、記述評価では 0〜15 の強度(目盛りは 0・5・10・15)になります。しかも規格自身が「強度は品質や望ましさを含意しない」と明記している。Sweetness と Acidity には選択肢のリストが無く自由記述で、一方主要な味のチェック欄には Sweet が別にあり、最大2つまで選びます嗜好評価はさらに別で、他の項目と同じ9段階です。杯間の一致(Uniformity)と欠点(Defect)はまた別の量で、5杯中の杯数として数え、控除は非均一1杯につき2点、欠点1杯につき4点。∴ 同じ「Sweetness」というラベルの下に、少なくとも4つの別の量があります。

このうち豆温の束だけは、その先を全部汚します。焙煎の速度式は、温度としてプローブの指示値を入れて立てられています。結果として活性化エネルギーが吸気温度と相関し、著者自身が「これらのモデルは物理的な意味を欠いている」と結論しました焙煎を式で読む)。

∴ ある変数を「振った」と書いてある文献を読むときは、その操作の中で同時に何が動いてしまっているかを先に列挙する。これがこの地図から取り出せる、いちばん持ち運びやすい道具です。

6. まだ争っていること

信頼度: 低〜中(いずれも仮説。反証の条件は書ける)

  • 1ハゼで制御感が変わる理由。通説は「発熱というアクセルが入るから」ですが、工学文献の結論は「豆温の曲線への影響は無視できる」で一致しています。いま調べているのは、蒸発というブレーキが抜けるからではないか、という側です。
  • 積み上げ量は、一つの数ではなく分布かもしれない。豆一粒ごと・層ごとの分布だとすれば、焙煎速度の急変は平均を変えずに分布の幅だけを変えうる。層方向は否定され、粒方向と多孔度方向は未検定です。
  • 深い焙煎の刺激的な後味(ハーシュ)の担い手が、まだ特定できていない。有力候補だった化合物群は、合計しても水中の閾値の 1/14〜1/21 にしかなりません(自算)。∴ 担い手は別にいます。
  • 実践家は、正しい操作を先に見つけ、説明を後から当てているのではないか。公刊された実務書の著者自身が、ディベロップ比率 20〜25% の根拠を「それは何かの証明ではない。自信を持たせてくれた相関である」と自己格付けしています。

7. まだ誰も測っていないこと

信頼度: (空白の所在そのものは、探索の結果として確認済み)

地図の価値は、描けている場所より白いまま残っている場所を正確に示せるかにあります。いま空いているのは次の4つです。

  • 焙煎の温度域(150〜230℃)で豆の比熱を測った文献が、一件もない。直接測定はすべて 150℃ 以下で、焙煎域の値はすべて外挿です。焙煎の数理モデルは、全部その上に建っています焙煎を式で読む)。
  • 到達焙煎色を固定して加熱機構(ドラム対流動層)を振った官能実験が 0 本。方式を振って官能まで測った研究は1件ありますが、到達色を固定していません。
  • 同一焙煎色 × 同一抽出収率で官能を測った実験がない。片側だけの統制は2本あり、軸は互いに直交しています。障壁は設計ではなく、焙煎の人と抽出の人が別の論文を書いていることです。
  • 精製方法を振った強度試験で、含水率を揃えたものが一件もない。豆は吸湿するとまず硬くなるため、事後の補正も効きません(生豆が決めていること)。

この記事が実践に活かせること

  1. 収斂味や苦味が出たら火力ではなく時間を疑い、甘さや質感が足りないなら時間ではなく温度を疑う。浅煎りでの「もっと浅く止める」は逆効果になりえます。収斂味は残ったクロロゲン酸の量ではなく、分解物の積み上げで決まるからです。
  2. 焙煎色を品質管理に使うなら、色に加えて重量損失を記録する。そして「同じ焙煎度」と言うときは何を揃えているのかを言う。色を揃えれば重量減は揃わず、重量減を揃えれば到達温度は揃いません。
  3. 高温短時間で焼いた豆は、同じ色でも多孔である。抽出レシピを使い回さない。短い側で強すぎる・苦いと感じたら、焙煎を戻す前に粉と湯の比か挽き目を見直します。
  4. 焙煎を比べる試飲では、色だけでなく濃度も揃える。全浸漬式(カッピングやフレンチプレス)なら平衡時の抽出収率が焙煎度にほぼ依らないので、粉と湯の比を揃えるだけで済みます。そして焙煎機付属の予測モデルは、あなたのプローブの上に建っています。プローブやバッチサイズを変えたら較正し直します。
  5. 官能を記録するときは、業界の口語ではなく「収斂味」「苦味」と書く。記録のタグも「何を揃えて何を振ったか」で付けます。

この記事に出てきた用語

用語ひとことで
メイラード反応アミノ酸+糖で褐色と香りができる反応
活性化エネルギー(Ea)その反応が温度にどれくらい敏感か。単位 kJ/mol
クロロゲン酸(CGA)生豆に多い酸。分解物が苦味と収斂味の担い手
キニド穏やかなほうの苦味を担う物質。量は逆U字を描く
収斂味口の中が乾いて引き締まる感覚。苦味とは別の系統
有機重量損失焙煎で失った重さのうち、水以外の分
多孔度豆の中に空隙が占める割合。抽出の速さに効く
抽出収率粉から液へ移った固形分の割合。濃度とは別の量
比熱温度を1度上げるのに要る熱量。モデルの土台になる量
豆温プローブ焙煎機の中の温度計。真の豆温ではなく指示値を出す

いま取り下げている記述

かつてここに書かれていて、その後の検証で取り下げたものです。同じ誤りを再び拾わないために残しています。全体像の記事なので、各記事から集めました。

取り下げた記述理由
メイラード反応は 140℃ から始まる閾値はない。140℃ は褐色が目視できる温度
深い焙煎の刺激的な後味は、官能の記述子として採点できる訓練パネルの語彙集3つのいずれにもその語がない。業界の口語
クロロゲン酸分解の Ea は 26〜79 kJ/mol の幅である幅ではない。単一ピーク・実豆の総量・単離した1分子という3つの別の量
発達不足は焙煎色で検出できる正常 74.4 と発達不足 74.9 の差は、反復測定のばらつき(標準偏差 0.88)を下回る
甘さの担い手は糖である抽出液中の糖は検知できる濃度の 1/20 しかない。物質は未同定
深煎りの苦味が強いのは、苦味物質が増えるからキニドは逆U字で深い側では頂点の 0.28 倍。増えたのではなく置き換わった
焙煎色が同じなら、焙煎の進行度も同じである統計的に等価な同じ明度で有機重量損失が 18% 違い、香気16成分中15に有意差
同じ焙煎色なら、抽出レシピは使い回せる同じ色に揃えた豆の中に、多孔度にして 8.2 ポイントの幅がある
比熱は焙煎が進むと下がる「下がる」側の唯一の根拠とされた文献の原典に、その記述がなかった。3対0
1ハゼで制御が変わるのは、発熱がアクセルとして入るから工学文献は一致して「豆温の曲線への影響は無視できる」とする。ブレーキ側もまだ仮説
焙煎機の方式が、独立した味の軸として効く到達色を揃えて方式を比べた官能実験が 0 本。方式と焙煎速度が交絡している
旧カッピングフォームの Sweetness 欄で、甘さの強さを比べられる杯ごとに「あるかないか」を判定する二値尺度。強さを示さない
メラノイジンへのフェノール取り込みは、肯定と否定で争っている両方とも正しく、両立する。分かれているのは結論ではなく、何を見たか

参考文献

  1. Schwartzberg, H. G. 2002. Modeling Bean Heating during Batch Roasting of Coffee Beans. In: Engineering and Food for the 21st Century, Chapter 52. CRC Press. DOI 10.1201/9781420010169.ch52
  2. Foods (MDPI). 2025. Maillard Reaction: Mechanism, Influencing Parameters, Advantages, Disadvantages, and Food Industrial Applications. Foods 14(11), 1881.
  3. Mehaya, F. M.; Mohammad, A. A. 2020. Thermostability of bioactive compounds during roasting process of coffee beans. PII S2405844020323513
  4. Perrone, D.; Donangelo, R.; Donangelo, C. M.; Farah, A. 2010. Modeling weight loss and chlorogenic acids content in coffee during roasting. Journal of Agricultural and Food Chemistry 58(23), 12238–12243. DOI 10.1021/jf102110u
  5. Sacchetti, G. et al. 2015. Non enzymatic browning during cocoa roasting as affected by processing time and temperature. Journal of Food Engineering 169, 44–52. DOI 10.1016/j.jfoodeng.2015.08.018
  6. Baggenstoss, J. 2008. Coffee Roasting and Quenching Technology — Formation and Stability of Aroma Compounds. Diss. ETH No. 17696, ETH Zürich.
  7. Al-Shemmeri, M.; Fryer, P.; Farr, R.; Lopez-Quiroga, E. 2024. Development of coffee bean porosity and thermophysical properties during roasting. Journal of Food Engineering 378, 112096. DOI 10.1016/j.jfoodeng.2024.112096
  8. Al-Shemmeri, M.; Fryer, P. J.; Farr, R.; Lopez-Quiroga, E. 2025. Batch-Scale Simulation of Heat and Mass Transfer of Coffee Roasting in Spouted Bed Roasters. Beverages 11(6), 162.
  9. Al-Shemmeri, M. 2024. A data driven approach to process & product simulations of coffee roasting. EngD論文, University of Birmingham.
  10. Blumberg, S.; Frank, O.; Hofmann, T. 2010. Quantitative Studies on the Influence of the Bean Roasting Parameters and Hot Water Percolation on the Concentrations of Bitter Compounds in Coffee Brew. Journal of Agricultural and Food Chemistry 58(6), 3720–3728. DOI 10.1021/jf9044606
  11. Frank, O.; Blumberg, S.; Kunert, C.; Zehentbauer, G.; Hofmann, T. 2007. Structure Determination and Sensory Analysis of Bitter-Tasting 4-Vinylcatechol Oligomers and Their Identification in Roasted Coffee by Means of LC-MS/MS. Journal of Agricultural and Food Chemistry. DOI 10.1021/jf0632280
  12. Calviño, A. M.; García-Medina, M. R.; Cometto-Muñiz, J. E. 1990. Interactions in caffeine–sucrose and coffee–sucrose mixtures: evidence of taste and flavor suppression. Chemical Senses 15(5), 505–519.
  13. Bekedam, E. K. et al. 2008. Roasting effects on formation mechanisms of coffee brew melanoidins. Journal of Agricultural and Food Chemistry 56(16), 7138–7145. DOI 10.1021/jf800999a
  14. Böhm, W.; Zinke, L.; Rehle, A.-K.; Henle, T. 2023. Role of Proteins in the Formation of Melanoidins during Coffee Roasting. Journal of Agricultural and Food Chemistry 71, 18499–18509. DOI 10.1021/acs.jafc.3c05425
  15. Ripper, B.; Kaiser, C. R.; Perrone, D. 2020. Use of NMR techniques to investigate the changes on the chemical composition of coffee melanoidins. Journal of Food Composition and Analysis 87, 103399. DOI 10.1016/j.jfca.2019.103399
  16. Shi, Q. et al. 2024. Comparison of Ultra-High-Pressure and Conventional Cold Brew Coffee at Different Roasting Degrees. Foods 13(19), 3119. DOI 10.3390/foods13193119
  17. Gniechwitz, D. et al. 2008. Characterization and fermentability of an ethanol soluble high molecular weight coffee fraction. Journal of Agricultural and Food Chemistry 56(14), 5960–5969. DOI 10.1021/jf800231q
  18. Singh, P. C.; Singh, R. K.; Bhamidipati, S.; Singh, S. N.; Barone, P. 1997. Thermophysical Properties of Fresh and Roasted Coffee Powders. Journal of Food Process Engineering 20(1), 31–50. DOI 10.1111/j.1745-4530.1997.tb00409.x
  19. Berbert, P. A.; Queiroz, D. M.; Silva, J. S.; Pinheiro Filho, J. B. 1995. Simulation of Coffee Drying in a Fixed Bed with Periodic Airflow Reversal. Journal of Agricultural Engineering Research 60(3), 167–173. DOI 10.1006/jaer.1995.1010
  20. Raemy, A. 1981. Differential Thermal Analysis and Heat Flow Calorimetry of Coffee and Chicory Products. Thermochimica Acta 43(2), 229–236. DOI 10.1016/0040-6031(81)80013-5
  21. Bolka, M.; Emire, S. 2020. Effects of coffee roasting technologies on cup quality and bioactive compounds of specialty coffee beans. Food Science & Nutrition 8(11), 6120–6130. DOI 10.1002/fsn3.1904
  22. Chindapan, N.; Puangngoen, C.; Devahastin, S. 2021. Profiles of volatile compounds and sensory characteristics of Robusta coffee beans roasted by hot air and superheated steam. International Journal of Food Science & Technology 56(8), 3814–3825. DOI 10.1111/ijfs.14997
  23. World Coffee Research. 2017. Sensory Lexicon — Unabridged Definition and References, Version 2.0.
  24. Chambers, E.; Sanchez, K.; Phan, U. X. T.; Miller, R.; Civille, G. V.; Di Donfrancesco, B. 2016. Development of a “living” lexicon for descriptive sensory analysis of brewed coffee. Journal of Sensory Studies 31, 465–480. DOI 10.1111/joss.12237
  25. Carvalho, N. B. et al. 2025. ロブスタ用フレーバーホイールの構築(RATA 法、候補170語から103語を採用). Scientific Reports.
  26. Pittia, P.; Dalla Rosa, M.; Lerici, C. R. 2001. Textural Changes of Coffee Beans as Affected by Roasting Conditions. LWT 34(3), 168–175. DOI 10.1006/fstl.2000.0749
  27. Pittia, P.; Nicoli, M. C.; Sacchetti, G. 2007. Effect of moisture and water activity on textural properties of raw and roasted coffee beans. Journal of Texture Studies 38, 116–134. DOI 10.1111/j.1745-4603.2007.00089.x
  28. Specialty Coffee Association. 2024. SCA Standard 103-2024 — Coffee Value Assessment: Descriptive Assessment (Version 2, June 2024). Specialty Coffee Association 発行。SCA 公式サイトの Coffee Value Assessment のページにて Open access で公開
  29. Specialty Coffee Association. 2024. SCA Standard 104-2024 — Coffee Value Assessment: Affective Assessment (Version 2, June 2024). Specialty Coffee Association 発行。SCA 公式サイトの Coffee Value Assessment のページにて Open access で公開
  30. Specialty Coffee Association. 2024. SCA adopts new Coffee Value Assessment cupping standards (SCA-102 / 103 / 104).
  31. Specialty Coffee Association of America. 2015. Cupping Protocols — Version: 16DEC2015.
  32. Fernandez-Alduenda, M. R.; Giuliano, P. 2021. Coffee Sensory and Cupping Handbook (Edition No. 01). Specialty Coffee Association. ISBN 978-1-3999-0329-5
  33. Coffee Review 公開レビュー51件.

関連記事

続きを読む

透過式の不均一な流れ — 自己増幅するしくみと、測られていない一段目

同じ粉を同じ量、同じ湯で淹れても、味が揃わないことがあります。原因としてよく挙がるのが「チャネリング」、つまり湯が粉の層の一部だけを通り抜けてしまう現象です。たいていの説明はここで止まります。この記事はその先を見ます。不均一な流れ(不均一抽出)は偶然のムラではなく、自分で自分を大きくするしくみを持っている。ただし、そのしくみの一段目は、まだ誰も測っていません。

lock-1

湯温は手段であって目的ではない — 抽出変数が味に届く経路

抽出の解説は、たいてい設定値の列で書かれています。「湯温(抽出温度)は93℃」「挽き目は中細」「比率は1対16」。ところが少なくとも湯温については、設定値そのものが味を決めているのではないことを示す実験があります。変数は、いったん別の量に変換されてから味に届いている。この記事では、その経路がどこを通っているのか、経路をたどらずに味へ抜ける例外は何なのかを順に見ていきます。

lock-1

メラノイジンが足しているもの — 収斂味と、「量が動く」という話の中身

メラノイジンは、コーヒーの解説でよく「苦味とコクの正体」として名前が挙がります。ところが直接の官能証拠が示しているのは、苦味ではありません。そして「抽出方式でカップの中のメラノイジン量が 4 倍以上変わる」という、よく引かれる数字の出どころをたどると、そこにあるのは実測ではありませんでした。この記事では、何がどこまで測られていて、どの数字がどういう性格のものなのかを確かめていきます。

lock-1

濃度と知覚のあいだ — 同じ量のカフェインが、同じ強さに苦くない

抽出の話は、たいてい「どれだけ溶け出したか」で終わります。濃度を測り、収率を計算し、そこから味を読む。ところが溶けた量と、口で感じる強さは、同じものではありません。同じ濃度の同じ分子が、周りに何があるかで違う強さに苦くなる。それを官能試験まで伴って示した研究が、この数年のあいだに独立した二つの系統から出ています。この記事では、その二つが何を測ったのか、どこまでが言えてどこからが言えないのかを順に見ていきます。

lock-1